京都地方裁判所 昭和56年(ワ)2023号 判決
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【判旨】
一小林康二が昭和五六年七月三〇日午後六時五分ころ京都市上京区智恵光院通今出川上る智恵光院通りを原動機付自転車に乗つて南進中、右道路東側の京都市立桃園小学校のプール監視所の日除け用すだれが風にあおられ取付けてあつた紐が切れて空に舞い上がり前記道路に落下したため康二はこれに乗り上げて転倒し頭部右側打撲挫創の傷害を負い近くの京都市上京区御前通今小路下る馬喰町九一一番地相馬病院に搬入され直ちに処置を受けたが脳挫傷のため二日後の同年八月一日午前二時四五分同病院で死亡したこと、及び被告が桃園校の設置管理者でありプール監視所は同校の教育のために供されていたことは当事者間に争いがない。
二プール監視所の設置管理の瑕疵及び責任
<証拠>を総合すれば次の事実が認められる。
桃園校のプール監視所に日除け用よしず(葺で編んだすだれ)が設置されたのは昭和五一年以降であり、設置期間は毎年七月から九月までの水泳期間である。日除けの設置取付はよしず三枚をプール監視所の逆L字型の鉄骨の上に並べて乗せ一二か所(鉄骨四本とよしずに編み込まれた竹棒三本とが各交差するところ)を新品の紐(塩化プロピレン製)で下からよしずに通し上から再び下に通して鉄骨とよしずの竹棒とを縛して固定するという方法がとられていた。昭和五六年にも右同様の方法により六月二三日によしずが取付けられた。
ところで使用されていた紐は塩化プロピレン製であつて太陽光線を受けると紫外線の作用により強度が低下し特に高温の下ではその効果が大きくなる性質を有しており事故当時には取付後一か月余り経過していたため紐の上部がかなり疲弊して弱くなつていた。また、当時桃園校のプール南側に一一階建てのマンションが建設中でその外郭部工事が完了していた。
昭和五六年七月三〇日午後一時ころ桃園校付近において風向東南東、最大瞬間風速毎秒約12.7メートルに達する強風が吹きこれが前記建設中のマンションの外壁に影響されて流れる方向が変わると共に流れる風速が一、二割増加してよしずに作用しこれをあおつたため疲弊していた紐の上部が切れて前記三枚のよしずのうちの一枚が飛んで舞い上り校舎西側の路上に落下した。
以上の事実が認められ右認定を覆えすに足りる証拠はない。
右事実によると、よしずの飛んだ原因は紫外線と高温により著しく強度の低下していた紐で固定してあつたところへ強風が作用したため紐が容易に切断されたことにあり、高温で紫外線が強く台風の到来が予想される夏期によしずを固定するのであるからそれらの環境に充分耐えうるだけの強度を持つた紐を用いるかその他の結合方法をとるべきであり、本件のような塩化プロピレン製の紐を用いるのであれば絶えず調査して定期的に取替え予想できる程度の強風に耐えうるだけの強度を維持させておくべきであつたにもかかわらず右強度を欠いていたと認められる。そうすると、被告市の営造物について通常備えるべき安全性を欠いていたものというべきである。
被告は、よしずが飛んだのは異常に強い風が発生したためであり不可抗力であつたと主張するけれども、前記の通り事故当時強風により紐が切れて飛んだよしずは三枚のうち一枚だけであつて他の二枚はなお鉄骨に固定されたまま残つていたのであり、前記の他の方法によつてもなお吹き飛ばす程度の強風であつたとは認められず、プール監視所が通常備えるべき安全性を有していてもなお防ぎきれなかつたとはいえないから被告の右主張は採用し難い。
そうすると、プール監視所は公の営造物として通常有すべき安全性を欠いていたからその設置管理に瑕疵があつたというべく他に右認定を左右するに足りる事情は認められず、従つて被告は国家賠償法二条一項に基ずき右瑕疵により生じた損害を賠償すべき責任がある。 (吉田秀文)